BSCIは離島の地域を思う有志と、技術を人に役立てたいと願う研究者によって生まれた、 美しい“しま”の会社です。

島の未来を守るために

BSCIは、長崎県五島列島北部の上五島で地元有志48名の熱い思いから誕生しました。
「こんままじゃいかんばい!」—過疎化と若者の人口流出に直面する中、「島の若者が誇りを持って働ける職場を作りたい」という願いを込めて立ち上がった企業です。かつて水産業で栄えた美しい新上五島町の未来を切り拓くために、地元の力を結集して新しい水産業の可能性を追求しています。

海の可能性を社会に届ける

BSCIのもう一つの柱は、海洋資源の活用です。
海にはフコキサンチンやジアジノキサンチンといった、健康や美容に寄与する貴重な天然成分が豊富に存在します。しかし、これらの成分は微細藻類などが生成し、自然界では微量しか得られないため、人間が利用することは難しいものでした。

BSCIでは、微細藻類の生産技術を専門とする研究者と共に、これまで「小さな生き物」しか活用できなかった海の恵みを、人々の健康と美容のために産業化。離島から世界へ、価値ある資源を届けるための取り組みを続けています。

 

フコキサンチンについて
フコキサンチンは多様な機能性を持つ貴重な天然物質で、ワカメや昆布などの海藻類に含まれる天然色素の一つです。精製されたフコキサンチンは赤い色をしていますが、ワカメや昆布にはクロロフィルと呼ばれる緑色の色素なども含まれているため、天然の海藻はやや濃い茶色(褐色)に見えます。

フコキサンチンは熱、光、酸素などの存在下で簡単に分解されてしまう保存が難しい貴重な成分です。茶色の生ワカメを茹でるときれいな緑色になるのは、熱に弱いフコキサンチンが分解されて、緑色の色素(クロロフィル)が残るからです。このようにフコキサンチンは、陸上で生活する人間が食べ物として取り込むのは非常に難しい栄養成分の一つです。

フコキサンチン(Fucoxanthin)は、ニンジンに含まれるβカロテンや、トマトや柿に含まれている赤い色素リコペンなどと共にカロテノイド色素と呼ばれる色素グループに分類される色素の一つです。カロテノイド色素には、人間の健康や美容に貢献する様々な機能性を持っている色素があります。例えば、眼の老化を防ぐルテインや強い抗酸化力を持つアスタキサンチンなども、このカロテノイド色素の仲間です。

この中でもフコキサンチンは、特に多様な機能性を持つことが知られています。近年の研究で、抗癌[1-3]、抗肥満[4-5]、抗糖尿病[6]、美白[7]、しわ防止[8]など、健康および美容に関する数多くの特筆すべき機能性が明らかとなっています。このような特筆すべき機能性からフコキサンチンは、健康食品や化粧品の原料として大きな注目を浴びており、その安定供給が望まれている貴重な海の天然物質です。

BSCIがつくるフコキサンチン
BSCIがつくるフコキサンチンは環境にやさしい技術で作られたフコキサンチンです。
現在、ほとんどのフコキサンチンは、コンブやワカメなどの天然の大型褐藻類を原料として生産されています。しかし、これらが繁茂する天然の藻場は、魚などの漁業資源の産卵や再生産の場所として保護すべきとても重要な環境です。

近年では、地球温暖化によって、南に生息する海藻を食べる魚(南方系草食魚類)が北の海に移動し、そこで海藻を食べることなどで、藻場が縮小する「磯焼け」が問題となっており、魚などの天然資源を糧として生活している地域では、その修復や保全が喫緊の課題となっています[9]。このような貴重な藻場を守る観点(環境保護)からも、天然の貴重な藻場を破壊しない環境にやさしいフコキサンチンの生産技術が求められてきました。

BSCIでは、フコキサンチンを多く含む微細藻類に着目し、それを陸上で培養することで、フコキサンチンを生産しています。フコキサンチンを生産する有用な微細藻類種は、培養が容易なクロレラやスピルリナなどの緑色の微細藻類と比較して、培養が難しく、安定的な生産が困難とされてきましたが、独自技術を開発し安定的に生成しています。

参考文献
[1] 安井, 田中(2013):フコキサンチンの大腸発がん予防, Functional Food Vol.6(4) 239-242

[2] Galasso et al (2019): Microalgal Derivatives as Potential Nutraceutical and Food Supplements for Human Health: A Focus on Cancer Prevention and Interception, Nurient 2019 Jun 11(6) 1226

[3] Martinez Andrade et al (2018): Marine Microalgae with Anti-Cancer Properties, Marie Drugs 2018 May 15; (5)

[4] 宮下(2014): http://agri-renkei.jp/news/docs/20141212seminar_miyashita.pdf

[5] 宮下(2008): 海産カロテノイド,フコキサンチンの多機能性, 化学と生物 Vol.46(7) 483-490

[6] 西川ら(2016):褐藻由来フコキサンチンの抗肥満・抗糖尿病効果とその機序, 化学と生物 Vol. 54(8), 580-585

[7] 下田(2016):フコキサンチンの抗肥満作用および美白作用, Food style 21, 20 (12), 68-70

[8] 特開2008-1623、血管新生抑制剤、京都大学、平田孝菅原達也 

[9] 寺脇,利信(2015):藻場の生態と回復に関する水産工学的研究,水産工学, 52巻2号, p. 141-145